あの夏の空に掌をかざして
「当たり前でしょ?ボクは"無"になったんだから」


 あたしの考えを見透かしたように、陽くんはそう言った。


 驚いているあたしには目もくれず、陽くんは続けた。


「ボクは、あかりちゃんを助けることに失敗した。だから、皆からも忘れられて、消えちゃっているんだ」


 事も無げに、陽くんは言う。淡々と、そんな言葉を吐いたのだ。


 うそ…。あの本に書いてあったことは、本当だったの?


「で、でも……陽くんはここにいるじゃない!あたしの目の前に!」


 そうだ!この闇の中にしか居れなくても、陽くんは確かに、ここに存在している。


 消えてなんか、いない。


 そう信じていたかった。


「あぁ、"想い"や"記憶"っていうのは、その場に留まり易いんだ」


 例え、その本人が死んじゃってもね。陽くんはそう続けた。意味深な言葉に、あたしは、ある考えがよぎった。


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