あの夏の空に掌をかざして
 ずっと押し込めていた恐怖が、じわじわと、あたしの胸に広がっていく。


 っダメ!まだ、時間はある!弱気になるな!あたしは、生きたい!!


「じゃあ!教えてよ!どうやったら、これを終わらせられるの!!」


 不安は焦りになって、子供相手に怒鳴ってしまった。


 陽くんは、困ったように笑った。


「その方法は、ボクも分からなかった。だから、失敗して、無になっちゃった」


 だけど、と、陽くんは言った。


「これまでの、過程は教えることが出来る。ここは、形のないモノ達が溜まる場所だから」


 ここは、そんなところだったんだ…。だから、陽くんのループの様子も分かったんだ。


 ここにきて、漸く冷静になる。


 こんなに小さい子が、あたしと同じ体験を、あんな事を経験して、そして、消えてしまったんだ。


 どんな気持ちだったんだろう。どれほど心細かっただろう。


 あどけない瞳の奥に、どこか大人っぽさも潜んでいるのは、それを経験したからか。


 それを想像すると、目の前の少年が、とても可哀想になった。

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