あの夏の空に掌をかざして
 最初の映像は、昔っぽくて、ボロボロの和服を着た女の子。見た覚えがあるものだった。


「これはね、君が読んだ本に書いてあった女の子と、そのお母さんの記憶だよ」


「これ…見たことある、よね?」


 陽くんは小さく頷き、是を示した。


 女の子は魔物に襲われ、それを知った母親がループをする話。


 この伝説の始まりの話。


「さっきも言ったけど、想いや記憶は、その場所に滞りやすいんだ」


「あのお母さんの想いも…ここにずっとあるんだよね?それで、霊的な力が強まる年に、誰かをループさせるんでしょ?」


 そこまでは、あの本にあったことだった。


 陽くんは、もう一度頷いた。


「だけど、その伝説は、それだけじゃなかったんだ」


「…どういうこと?」


 陽くんの言葉に、あたしは首をかしげる。
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