あの夏の空に掌をかざして
「だって、おかしいとは思わない?10年前、ボクはあかりちゃんを助けた。そして、失敗した。そして、今は、あかりちゃんがそのループを繰り返している。日向を助けるためにね」


 これは、偶然かな?陽くんはそう言った。


「え…でも、霊的な力が強まる年、だから…偶々その年に、あたし達が来たんじゃないの?」


「残念ながら、違うんだよ」


 陽くんは、首を左右に振りながら、また悲しい顔をした。


「実はね、この伝説には、続きがあるんだ」


 神妙な顔つきで言うから、あたしも無意識に身構えた。


「強すぎるお母さんの"想い"は、世代を越えて、霊的な力が強まる年に、誰かに自分と同じ体験をさせる。でも、絶対に助けることはできないんだ」


「っな!」


 あたしは、自分の耳を疑った。今までの苦労が、全て水の泡になったのだ。ほんの少しの希望は、簡単に崩れ去った。


 希望を持つということは、期待をするということ。


 小さな期待は、あたしに大きな絶望感を味あわせた。
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