あの夏の空に掌をかざして

大好きな人

「…かりちゃん、あかりちゃん」


 覚醒していく意識の傍らで、遠くで聞こえていた陽くんの声が、だんだん日向のものになっていった。


「ん……ひなた?」


「あかりちゃん、起きた?」


 目を開けると、日向の顔が、10センチくらい前にあった。


 あたしは、ベンチに寝かされていて、日向に膝枕してもらっていたのだ。


 途端に胸はドキドキと鳴り止まなくなり、目も一気に覚めた。


「大丈夫?あかりちゃん倒れて、ここに運んだんだよ」


「そ、そうなんだ……ごめん」


 よく見ると、ここはあの公園だった。


 空は夕焼けでオレンジ色に染まり、涼しい時刻だった。


 さっきまでの事も思い出した。


 …タイムリミットが、もう迫ってる。


 比喩するとすれば、まるで死刑宣告を受けた死刑囚のような心境だ。


 だけど、どこか心は冷静で、その事実を受け入れていた。
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