あの夏の空に掌をかざして
 言えないよ……言えるわけ、ないじゃん。


 日向を悲しませるようなこと、あたしは何一つしたくないもん。


「僕は…そんなに頼りなかった?」


「っちが!」


 あたしを抱き締める力が、強くなった。


「違う!違うの………そんなんじゃなくて」


「じゃあ………なに?」


 言葉に詰まって、俯く。


 あたしは、気持ちは伝えないつもりだった。


 日向は忘れてしまったとしても、それでも、いつか重荷になってしまうことはしたくなかったからだ。


 だけど、


 ぎゅっ、と、日向の袖を握る。


 それに気づいた日向が、「あかりちゃん…?」と、あたしを心配そうに覗きこんだ。


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