あの夏の空に掌をかざして
「日向が………すきだったから」


 日向の腕の力が、少しだけ緩んだ。


「え…」


「日向が…好きで、好きで、大好きだったから」


 いつの間にか、止まっていた涙が、また溢れ出した。


 地面が滲んで、もう何も見えなかった。


「だから、迷惑はかけたくなかったし……悲しませたくなかった」


 ぼろぼろぼろぼろ。


 大粒の涙は、止まることを知らない。止める術も、あたしは知らなかった。


 そう、知らないことだらけだった。


「日向が、恋愛感情で………すきなの…」


「あかり…ちゃん」


 日向の顔が見れなくて、自分の顔を見せたくなくて、あたしは顔を上げることができなかった。


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