あの夏の空に掌をかざして
「髪濡れてるじゃない、ちゃんと乾かさないと風邪引くよ?」
あたしを見つめていたと思っていた日向は、「僕が乾かしてあげるよ」と言って立ち上がった。
「い、いいよいいよ!それくらい自分でできるから~!」
「いいっていいって、あかりちゃんは座ってて」
見つめられるだけでドキドキするのに、触れられたりしたら、あたしの心臓がもたない!!
あたしの心の中には気付くはずもなく、日向はさっさとドライヤーを取ってきて、コンセントに挿入し、乾かす準備を着々と進めていた。
「熱かったら言ってね」
日向の指が、優しい手つきであたしの髪に触れる。触れた瞬間、鼓動が更に強く、速くなるのを感じた。
やばい…触れられたところが、熱い……。
ドライヤーの、熱くも冷たくもない丁度いい温風が、首を掠める。日向の指とともに耳にも当たって、くすぐったい。
「…あかりちゃんの髪、いい匂いがするね」
「ひゃっ…!」
髪を一束すくわれて、日向の顔に近づけられる。早鐘をうつ心臓が、あちこちに出来たみたいに、全身から鼓動の勢いが感じられる。
だめ、聞こえちゃうよ…!止まれ、止まれ!
「終わり、うん、サラサラになったよ」
日向がドライヤーを片付けに行く。あたしは、ありがとうも言えずに、両手で顔を覆う。多分、今鏡を見たら、耳まで紅くなってるだろう。
はぁ~~、心臓に悪いよ~!けど、…嬉しかったな。
日向が戻ってきて、また見つめられることになったのだった。