あの夏の空に掌をかざして
「は~、もういーや、下ろしてこ」
アレンジ出来なくても、たまには違う髪型にすることで、少しくらいは異性として見てくれたらな……なんて思いながら、ぐちゃぐちゃになった髪にクシを入れる。
「あ、そうだ!」
日曜日に買い物した袋から、ヘアコロンを取り出す。古着屋に行った後に、渋るあたしに、楓が無理矢理買わしたといってもいい代物だ。なんだか、コロンとか香水とか、あたしにはまだ早い気がしたから。
あの時は嫌がっちゃったけど、これが役に立つなんてなあ……。
そう思いながら、スプレータイプのヘアコロンを髪にかける。これは、よく分かんないあたしのために、楓があたしをイメージして選んでくれたものだ。
髪を一つまみすくい上げ、顔の正面にもってくると、ふわりと香るフローラルの匂い。あたしの雰囲気は可愛い系だから、らしい。
「わあっ!いい香り!」
……日向は気付いてくれるかな。いつもと違うこと……。
すくった髪を優しく握りしめて、今日のデートに想いをはせるのだった。