あの夏の空に掌をかざして


「びっくりした?これ、ナマコなんだって」


 そう言いながら、日向はあたしの視界を遮っていた左手を退ける。


 目の前には、お世辞にも可愛いとはいえない、黒くて楕円形の生き物がいた。


 そして、上には大きく[海の生き物タッチコーナー]と書いてある。


「びっくりしたぁ~!何ここ!すごい!触っちゃったよ!!」


 日向に興奮したまま、思ったことをそのまま伝える。暫くして興奮が覚めてくると、あたしを見つめる日向に気付いた。


 不思議そうに日向を見つめると、日向は微笑んだ。


「あかりちゃんには、やっぱり笑顔が似合ってるね」


「え……」


 もしかして、元気付けるために、ここに連れてきてくれたのかな……。


 それに、ここが分かってたって事は、調べてくれてたってこと?


「じゃあ、次いこっか」


 そう言って日向とあたしは、並んで次のコーナーへと歩き出した。
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