あの夏の空に掌をかざして
 5分ほど歩くと、[さかのぼり]という定食屋さんを発見した。見た目は創立100年という年数もあって、木造建築でかなり古い感じだった。あまり大きくもないし、建物も改築していないのだろうか。


「あった!ここだよね?お腹すいた~、早くはいろ!」


「はいはい」


 あたしが急かすと、日向は子供に言うようにあたしに言って、引き戸を開き、のれんをくぐる。


 内装は、これまた古くて、けれど、それがいい味を出しているように思えた。どこか懐かしいような気もして、それも人気の要因の一つなのかな、なんて思った。


 店内には、あたし達以外のお客さんは居ないようだった。


「いらっしゃい」


 店の奥から、他の定員らしき人も居ないので、ここを経営していると思われるおばあさんがでてきた。


 なんか、人当たりの良さそうな人だな。人好きのする笑顔?みたいな。


 こっちに座りな、と、あたし達は店の右側の席に案内された。


 メニュー表を渡されて、日向とあたしは二人で頼むものを選ぶ。お腹すいたから早く食べたいけど、案外メニューが多くて、何食べようか迷ってしまった。


「あたし魚フライ定食で!」


「僕はトンカツ定食で」


 厨房からはーい、という声がして、あたし達は暫く待つことになった。
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