あの夏の空に掌をかざして
 10分くらいして、あのおばあさんが持ってきた定食は、ほんとに美味しそうで、食欲がそそられる。


 二人で頂きますして、一口、口に入れる。噛み締めながら、ゆっくり飲み込む。


「おいしー!ここの魚フライ最高!」


「へぇ、じゃあ、僕にも一口くれない?僕のもあげるから」


 あまりの美味しさに、ガッツポーズしながら喜ぶあたしを見て、日向が言った。あたしがあまりにも美味しそうに食べるから、日向も食べてみたくなったのだろう。


「はい、あーん」


 日向が、自分のお箸をあたしの口に持ってきたのを見て、目を見開く。


 え…それって…か、間接キスって言うんじゃ…。


 心臓がばくばくうるさい。


 そんなあたしの気持ちなどには少しも気づかず、日向はあたしに笑いながらお箸を近付ける。


「ほら、落ちちゃうよ」


 日向から、お箸の上のカツを早く食べろと促される。


 あたしは意を決して、日向のお箸を口に含んだ。


「美味しい?」


 味なんて分かるはずもなく、けれど、一応「お、おいしいよ」と言っておいた。

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