あの夏の空に掌をかざして


「あかりちゃん、僕にもくれない?」


 日向から期待を込めた目で見つめられる。


 …ここで、日向のお箸使っても変だよね。


 あたしは、自分のお箸でフライの一部を切り取り、落ちてもいいように左手を下に添えて、日向の口元に持っていった。


 手が…震える…。どうしよう、すごい恥ずかしい。


 日向は何の躊躇もせずに、身を乗り出してそれをパクリと食べた。


 衣が口に付いたようで、それを舌で舐めとる仕草が、なんだかとても妖艶だった。


 目線が、日向の唇に釘付けになる。そんな自分が恥ずかしくて、うつ向くけど、顔の赤さはもう、どうしようもなかった。


「あはは、ごめんごめんあかりちゃん、ちょっとイタズラしすぎちゃった?」


 そんなあたしを見て、日向は笑った。


 意味を理解すると、途端に恥ずかしさで全身が真っ赤になる。


「もー!やめてよ心臓に悪い!!!」


「ごめんね、あかりちゃんが純粋で面白いからつい、」


 じとりと睨み付けるが、赤くなった顔ではなんの怖さもない。


 ため息をつく。まずは水を飲んで、体温を下げて落ち着こうと思った。
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