あの夏の空に掌をかざして
「お熱いねぇ」


 そんなあたし達の会話を聞いていたおばあさんが、会計の時にあたし達に言ってきた。


 あたしは聞かれていたと思うと恥ずかしくて、なにも言えなかった。


「お二人さんは恋人どうしかい?」


「いえ、幼なじみです」


 おばあさんの質問に、即答した日向。


 ……そっか、日向にとっては、あたしなんかーーーーー。


 やっぱり、"幼なじみ"っていう壁があるんだと、実感させられた。


「そうかい、そういえば、この時逆町に伝わるある伝説は知ってるかい?」


「伝説……ですか?」


 唐突なおばあさんの話を、興味深げに聞く日向。


 …そんなのいいじゃん、夏休みは今日までなのに。あたしとのデートも、あと少ししかないのに。 


 あたしは、日向においてけぼりにされてる寂しさと、あと数時間しかないという焦りから、イライラが止まらなかった。


 おばあさんはニヤリ、と笑って、あたし達に耳打ちする。


「あぁ、そうなんだよ、ここはね、"時間を遡れる町"なんだよ」


 時を……さかのぼれる…?


 そこで初めて、あたしはおばあさんの話に興味を抱いた。





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