あの夏の空に掌をかざして
「時を遡れるって……どういうことですか?」


「ああ、そのままの意味じゃよ。でもやろうと思って出来るんじゃない。本当に強く"やり遂げたい"と思った事をやり遂げるために、その日1日を遡るんじゃ。何回も何回も、」


 おばあさんの語り口調は、なんだかオカルトを語るテレビの人に似てて、あまり信憑性がない。おばあさんだし、ボケてるのかなとかも思ったけど、それにしてはかなりしっかりしている。


「何回も?」 


「そうじゃ。死んででもやり遂げたいという強い想いが、何度でも何度でも、やり遂げるまで時を遡り、繰り返すんじゃ。ーー意思とは関係なしに」


 意思とは………関係なしに?てことは、途中で止められないってことなのかな?


 あたしは頭が良い方じゃないから、理解力も解釈力ないけど、多分あれはこういう意味だと思う。


「じゃが、300回目までにやり遂げることが出来なければーーーーー」


「出来なければ?」


 唾をごくりと飲み込む。


「そこまでは知らん」


 ガクッ、と効果音がしそうなくらい見事に転んだあたし達を見て、おばあさんは高らかに笑った。
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