あの夏の空に掌をかざして


「ほら、こんなに赤くなって、血も出てるじゃない、なんでもっと早く言わなかったの?」


 靴擦れがバレた後、近くのコンビニエンスストアで簡単な処置道具を買って、あたし達は公園に来た。


 今、あたしは東屋のイスに座り、左足を日向に預けている。


 一人でもできると言ったのだが、"あたしは不器用すぎて心配"という日向の圧力におされて、結局日向にやってもらうことにした。


 シンデレラになったみたい……なんて。


「…ごめんなさい、心配かけたくなくて」


「こうなった後で気付く方が心配するんだけど?」


 グッと、言葉につまる。こう言うときの日向は、何を言ってもだめだ。


 ……ずるい、人のあげあし取るなんてさ。


 だけど、本当に心配してくれているんだと分かるから、あたしは何も言わずに受け入れることにした。


 その証拠に、言葉の冷たさとは違って、あたしに触れる手付きは丁寧で優しくて、それでいて、その手はとても温かかった。


 日向……。日向、日向。好き。日向、大好き。 


 想いが溢れて、どうしようもなく、胸が愛しさでいっぱいになる。それを伝えたくて、言いたくて、心の中で、必死に日向を想う。


 ばか、思ってるだけじゃ、何も伝わらないのに。






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