あの夏の空に掌をかざして
「ん、これでよしっ…と」


 あたしに絆創膏を貼って、日向は立ち上がった。あたしは靴を履いて、足の調子を確かめる。


 すごい、全然痛くない!!


「ありがと日向!全然痛くないよ!」


 日向にお礼を言うと、日向は笑って、何か飲み物買ってくるね、と言った。


「や、やだ!あたしも行く!」


 あと少ししか時間がないのに、離れるなんてやだよ!


「その靴で行ったら、靴擦れが悪化するだけだよ、大人しく待っててね」


 優しいけど、有無を言わせない日向の言葉に、あたしは渋りながら、大人しく待っていることにする。この靴を履いてきたことを後悔するのは、これで2回目だ。


 2度あることは3度あるらしいからな、気を付けよ。


 そんなことを考えながら、だんだん小さくなっていく日向の背中を見つめていた。どうやら、公園の外にある自販機の方に買いに行くらしい。


 完全に見えなくなって、あたしはすることもないので、公園の中を見渡す。人気のない公園なのか、あたし達以外、人はいない。


 そこで、ある引っ掛かりを覚える。


 ーーーーーーあたし、ここ来たことある?


 初めて来たところのはずなのに、何故か懐かしいような錯覚を覚えたのだ。なんだか、懐かしくて、悲しくて、苦しい感じ。


 あやふやな感覚に不快感を感じ、あたしはすぐ忘れることにした。




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