あの夏の空に掌をかざして
「は、はーい!」


 僅かな違和感と不信感を無理矢理おしこめて、あたしは玄関に向かう。


 おっと、バッグわすれーーーーー……あれ?


「これ、前もあったような……なんて」


 デジャヴのような出来事に、更に奇妙さが増す。


 そ、そんなわけない!早く行かなくちゃ!


 止めていた足を、押し進める。玄関までかけ下りて、ドアを勢いよく開ける。


「わっ」


 そこにいた日向は、すっとんきょんな声を上げたかと思うと、目を見開いて、暫く固まっていた。


 沈黙を破ったのは、あたしの方だった。


「え、えーと、おはよ、日向」


 日向はハッとしたような顔をして、あたしに挨拶をした。


「おはようあかりちゃん、なんか、今日は雰囲気ちがうね」


「へ?あっ、そうかな?」


 テンパるあたしは、わざとらしいような気もしたけど、日向は気にせずに微笑んでくれた。


「すごい似合ってるよ、あかりちゃん、可愛い」


 顔が赤くなる。日向が服装を褒めてくれたのは、初めてだったから。


 楓に選んでもらってよかった…ちゃんとお礼しとかないとね!


「それじゃあいこっか」


 
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