あの夏の空に掌をかざして
 歩き出す日向の左側を歩く。


 改めてチラリと日向の方を見てーーーーあたしは絶句した。


「……ぇ?」


 日向の格好は、シンプルな白Tに黒いスタジャン、ジーンズにスニーカーという、至って普通な格好。だけどあたしには、曖昧だったものが、明確になっていくような衝撃があった。


 あの格好……夢、でもあったよね?……予知夢…?いや、そんなはず…。


「どうかした?」


 日向の声にハッとする。じっと見つめていたあたしを不審に思ったらしい。怪訝そうな顔で、あたしを見下ろす。


「あ…ううん、日向もカッコいいね」


 驚くほどすんなり出た言葉に、自分でもびっくりする。気付いたあとに、恥ずかしくて赤くなりそうになったが、日向は笑ってくれた。


「そう?ありがとう」

 
 それからは、あれは夢だったのか、そうでないのか、自分に自問自答しながら、バスまで歩くのだった。

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