あの夏の空に掌をかざして
「あかりちゃんは車酔いしちゃう事があるからね」


 そう言って、日向はあたしをバスの窓際に座らせてくれた。


「……ありがと、日向」


 いつもなら、嬉しくて仕方ないはずの、日向の優しい一言一言に、今日は恐怖感を感じる。素直に喜べない。素直に感謝できない。


 ……怖い、もしあれが予知夢なら、日向はーーーーー。


 不安感と焦燥感が、心のなかを駆けめぐる。


 片手で、震える片手を握るあたしを、日向は見逃さなかった。


「…あかりちゃん、ほんとに大丈夫?」


 ビクッ、と、肩が分かりやすくビクつく。


「ぁ………」


「やっぱり帰ろっか?」


「っやだ!」


 日向の言葉に、あたしは強く拒否する。


 まだ、そうと決まったわけじゃないもん、それに、もうこんな風に遊べるの、いつになるかわからないから。


 だけど、もし本当に予知夢だったら……。


 色んな気持ちが葛藤するあたしの様子を見て、日向はため息をついて、「じゃあ、体調悪くなったらすぐ帰るからね」と言った。。


 どうやら、体調が悪いのに、あたしが駄々をこねていると思っているようだ。


「……ぅん」


 あたしは、自分の弱さに勝てなかった。

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