あの夏の空に掌をかざして
 あたし達は、あの公園にいた。


 日向は、あたしの前に膝を曲げて、あたしの足の応急処置をしてくれている。


 ……やばい、考えないといけないのに、嬉しい。


 ドキドキうるさい心臓は、あたしの思考にいちいち邪魔をして、中断させる。そのせいで、さっきから何も考えられない。


「聞いてる?全然大丈夫じゃないんだけど?」


 …怒る日向もかっこいい、なんて思うあたしは末期かな。


 それでも、ずっと怒られるのは嫌なので、素直に「ごめんなさい」をする。


 あたしの足に集中して、あたしに気付かないことをいいことに、あたしは日向にみとれる。


 優しい目尻、長い影を作り出すまつげ、スッと通った鼻、それて、薄く形の良い唇。全てのパーツが完璧で、美しくて、あたしはほう、と溜め息をつく。


 その後日向がココアを買ってきてくれて、時間を確認する。


「もう、帰ろっか」

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