あの夏の空に掌をかざして
 バタバタとお風呂場に走り、そのドアを躊躇いもなく開ける。


 するとーーーー、


「っ!」


 そこにいた日向は、浴槽に浸かり、感電したようにぴくぴくと小刻みに痙攣していた。水から外に出ている腕は、ぶるぶると震え、顔は苦悶に歪んでいる。


「日向ー!!なんで…こんなことに!」


 辺りを見渡すと、脱衣場のコンセントから繋がっているドライヤーの先端が、浴槽の中に入っていた。


 あたしは慌てて、厚いタオルでコンセントを抜く。


 痙攣していた日向は、糸が切れたように湯船に沈んで、それから浮かんでくることは無かった。


 体が光っているような気がする。


 フワフワしてくる思考と、だんだん透けて薄くなるあたし。





 あたしはまた、日向を助けることが出来なかったーーー。
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