あの夏の空に掌をかざして
『で?どうしたわけ?』


 楓は、あたしが泣き止むまで通話を切らずにいてくれた。そして、わけをちゃんと訊いてくれる。


「……これからあたしの話を聞いても、驚かないでね」


 そう前置きをしておいてから、あたしは、もう限界だったからなのか、導かれるように、口が勝手に全てを話していた。


 あたしの現実味のない話を聞いても、楓は口を挟むことなく、最後まで聞いてくれた。


 そして、暫く考えてから、口を開いた。


『あかり…正直いうと、あたしはまだあんたの話を信じられない』


「……」


 当たり前だ。楓にとっては、昨日励ました友達が、今日になって、いきなり突拍子もないことを言い出したのだから。


 あたしにとっては101日前、楓にとっては、昨日の事。


 それがなんだか、とてつもなく寂しいことのような気がした。


 ーーーあたしは、もう8月30日の楓との話も、曖昧になってきてるのに。











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