あの夏の空に掌をかざして
恥ずかしさに、穴があったら入りたい欲求を押し留めて、楓の次の言葉を待つ。
『それめっちゃいいアイデアじゃん!明日も宿題教えてもらうんでしょ?じゃあ誘うんなら明日だね!』
「え!明日!?ちょっと急すぎない!?」
『あかりなら大丈夫だって!用事でもなくちゃ、大事な人からのお誘い断ると思う?』
納得してしまう。大事なのかどうかは分からないけど。だけど、日向は多忙な人だ。皆の人気者だし、遊びのお誘いも尽きることはない。そんな人が、夏休みの最後の日に誘われていないかどうか怪しい。
日向は先約を断って、他を優先させるほど薄情な人間ではない。それはあたしが一番よく分かってる。
ーーーやっぱり、やめておこうかな……。
いや、だめだ、もう諦めるのはやめるんでしょ!?たとえ断られても、やらないよりかはずっとましなはず!
「うん、明日誘ってみる!ありがとね、おやすみ、楓!大好き!」
そう楓に言ってから、通話を切る。
何も解決したわけではないけど、心はとても晴れやかだった。
気持ちが軽くなると、途端に睡魔に襲われて、ベッドに座っていたことをいいことに、そのまま仰向けに倒れ、意識を落としたのだった。