あの夏の空に掌をかざして
〈時逆町の都市伝説〉
時逆町は、古代より霊的なパワーが強い町として有名だった。
その証拠として、この地には、祈祷に使われたとされている道具や、都市伝説が数多く残されている。
その中でも、特に有名で、本当に在るといわれている都市伝説を紹介したい。
それは、「時遡り」といわれ、昔から言い伝えられてきた伝説だ。
大まかな内容は、"強く助けたい"と思った相手を助けるために、幾度も幾度も時を遡って、300回までやり直せる事が出来る、ということらしい。
これだけならとても魅力的だが、この都市伝説には続きがある。
300回という点に着目して欲しい。何故300回なのかは分からないが、300回を越しても相手を助けられなかったら、時を遡り続けている"自分"は、消えてしまうらしいのだ。
「っっ!」
「……これ…本当なの?……じゃあ、300回を越したら…あかりは…」
ここまで読んだところで、二人で顔を見合わせる。
あのおばあさんの話とは、若干違っているところもあるけど、書物であるこの情報の方が信憑性がある。口伝というものも、人の記憶というものも、あまり宛にならないからだ。
「……まだ分かんないよ…読も…」