あの夏の空に掌をかざして
 ……あたたかい。


 楓の腕の中は、温かくて暖かくて、なんだか泣きそうになった。


「…あたしだって嫌だよ……消えたくない!楓と離れたくない!まだ、一緒にいたいよ!!」


 想いが、爆発する。


 蓋が取れてしまったあたしの胸からは、苦しくなるほどいっぱいになった想いが、止めどなく溢れてくる。


 ぎゅうぎゅう、腕の力が強くなってって、苦しいのに、それが嬉しかった。


「……楓…あたし、楓がダイスキだよ……」


「……」


 楓は、黙ってあたしの話に耳を傾けている。


「あたしね、子供っぽくて、バカそうって言われるけど、ちゃんと楓のこと、分かってると思うんだぁ」


「運動が得意でスポーツマンで、皆から好かれてて、サバサバしてる感じだけど、ほんとは意地っ張りで頑固で照れ屋さんで、根はすっごい優しいとことか」


「あたしのこと、いっつもバカにしてくるけど、本当に傷つくことは言わないし、ちゃんと気遣ってくれてるし、相談も愚痴もいーっぱい付き合ってくれてさ、」


「ねぇ?覚えてる?入学式のあの日、自己紹介であがっちゃったあたしを助けてくれたこと……あたしね、すごい救われたんだよ、楓に。その時も、その他の時も、今だって…楓は覚えてないかもだけど」


 伝えたいことを全部伝えて、最後に、声が震えないように、大きく息を吸う。





「あたしはっ!……楓が、世界一の!親友だっ、て、思ってる!!」


 涙でぐしゃぐしゃの顔で精一杯の笑顔をつくり、あたしは楓に伝えきった。



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