【短】あなたの鍵が見つからなくて
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適当に入ったはずだった定食屋さん。味は絶品だし、ご主人と意気投合しちゃって長居してる。
あっという間に午後5時。
「おじさん、このまま夕飯食べていく」
「翼ちゃん、大丈夫かい? 引っ越したばかりだって言ってただろ。節約しなよ?」
「今日は特別なの。唐揚げ定食お願い」
「仕方ないな。食べたら帰るんだよ」
おじさんの揚げ物、本当に美味しくて毎日通いたくなる。まあ、そういうわけにはいかないんだけど。
夏休み中にアルバイトでも探そうかな。
「あ。そういえば……」
部屋を出る時のことを思い出す。
「4時までに家を出ろって言ってたかな。もしかして、帰れなくなった?」