【短】あなたの鍵が見つからなくて
なんか、おじさんには全部わかっていたみたい。
さすが大学の近くで飲食店やってるだけある。お客さんのこと、よく見てるな。
唐揚げが美味しい。
サラダも美味しい。
ごはんも、お味噌汁も美味しくて。
なんだか、泣きたくなる。
あんなこと言われて、怒ってたけど。
やっぱり辛いよ。切ないよ。
受け入れてもらえないって、すごく……。
「なに、泣いてんだよ」
「え?」
頭上からおじさんとは違う声が降ってきて、あたしはびっくりした。お陰で涙は止まったけれど。
「瑠佳さん? どうして?」
出会ってそんなに日は経ってないけど、こんなに乱れた瑠佳さんを見たのは初めて。