【短】あなたの鍵が見つからなくて
髪ボサボサだし、シャツなんか汗で濡れてるし、息まで乱れちゃって、なんだからしくない。
「なんでって……」
「出ていけって言ったでしょ?」
「それは……っ」
「言ったじゃない!」
大きな声で叫んだから、混み合いつつある店内が一瞬静かになる。
恥ずかしくなって俯くと、その間に瑠佳さんが勝手にお金を払っていた。
「行くぞ」
「待ってよ!」
腕を引っ張られながらも、あたしは訴える。
「おじさんがサービスしてくれた唐揚げ! あと1つ残ってる……」
言った瞬間に、ぱくり。
あいつ、あたしの唐揚げ食べやがった!
なんであんたが食べちゃうの?
あたしのために、おじさんが付けてくれたサービス。
「ひ、引っ張らないでよぉ」
「うるさい」
よくわからないけど、瑠佳さんは怒っているみたい。
仕方なく、あたしは引っ張られたまま定食屋を後にした。