【短】あなたの鍵が見つからなくて
鍵のないドア
***
部屋に戻ってきたあたしたち。
ずっと無言。
なんか、よくわからないけれど。
部屋に入れてくれたのはよかった。
お風呂にも入れたし。
お茶も用意してくれて。
優しい。
だから、怖いんですけど。
でも、なんであんな汗だくで定食屋にいたの?
今は澄ました顔してるけど、あの時は……なんか、焦ってた。
「ねえ」
話しかけても無言。やっぱり怒ってる。
「瑠佳さん?」
「…………」
「もしかして、だけど。あたしのこと、捜しに来てくれた?」
一瞬、目が合った気がするけど。すぐにテレビに集中する。
なんか、嫌な感じ。