【短】あなたの鍵が見つからなくて


「お返し!」




 今度は逆に、あたしは床に押しつけられた。




「お前、キス下手」


「は……っ」




 イラッとして瑠佳さんを押し退けようとしたけれど、ぎゅっと抱きしめられて動けない。




「好きになんてならねえ、絶対」




 そう言って、力強くキスされた。



 びっくりするくらい深く、優しく、何もかも真っ白になってしまうくらい濃厚で。
 とろけそう。
 熱くなる……。




「翼」


「初めて、呼んでくれた」


「好きになったこと、後悔するぞ」


「しないよ、絶対」


「俺は好きじゃない」


「好きになってもらうから、絶対にね」

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