先生、僕を誘拐してください。
四、夏休み。手前。
テスト終了日に、初日のテストが返ってくるのが憂鬱だった。
朝のホームルームで一枚、放課後二枚も返ってきた。
可でもなく不可でもない平均点。でもきっと大学を目指す六割の人たちに夏休み後抜かされる。
それは私が怠けるからではなく、彼らが努力するからだ。
「……村田くんに教えてもらったのがテスト後でよかった」
テスト中だったらきっともと順位も点も落としていた。
「え? 村田くんって未来ちゃんの彼氏の?」
「そうなの!?」
真由が私のテストの、点数を隠すために折り曲げたプリントの端をめくる。
そして私が思ったように、可もなく不可もなかったために指で弾かれる。
「未来ちゃんは否定するだろうけど、見てたらわかるよ。村田くんすっごくラブラブ攻撃してるから」