先生、僕を誘拐してください。
エピローグ
はく製のカナリアは、黄色だった。レモンカナリアというらしい。
あとローラーカナリアは、カナリアの中で一番鳴き声が綺麗らしい。
はく製なので、歌声なんて聴こえないからわからないけれど。
私は奏を誘拐して、学際の準備をすべて放棄させた。
重罪になってもそれは仕方ないと覚悟していたけれど、博物館を出て、こっそり学校に戻った時には世界は一転していた。
部活で忙しいと、クラスの出し物をサボりがちだったクラスメイト、期待しすぎて生徒会の仕事を与えすぎたと生徒会の二年、忙しいのにどうしてもと応援団に引きずりこんだ応援団長が謝罪してきたのだった。
もちろん、バスケ部の皆や敦美先生もだ。
誰も、――私さえも奏が自分を追い込んで削って仕事をしていることに気づいていなかった。
「あとは俺たちに任せて」
朝倉くんが、奏にそういってくれた。
「二人を追い詰めてしまっていた俺が、どうにかするから」
学際一日目は、生徒会が順番に見回りをする予定だったが、奏に押し付けていた時間は大幅にカットされ、奏は自由時間を手に入れた。
そして、人前で歌うのに実は抵抗があったと伝えてくれた奏。
合唱部の出し物は、朝倉くんが引き受けてくれた。