『誰にも言うなよ?』
「ないですね。木乃さんの靴」
「……逃げられたか」
ささくさと靴を履き替える雅人。
「帰るんですか?」
「素子いないならもう学校に残ってる意味ないしな」
「……そうですか。さようなら、青山くん」
数秒後、
雅人のいなくなった昇降口でため息をつく狼谷。
「ツメが甘いなぁ、青山は」
呆れたように肩をすくめたあと、なにやらあたりを詮索し始めた。
そして――、あるものを見つけた。
そう。
狼谷がゴミ箱から拾い上げたのは、
素子のスニーカーだった。
「上靴も外靴もないなんておかしいだろう。……で、肝心のアイツはどこに隠されてるんだ?」
ニヤッと笑うと狼谷は歩き始めた。