『誰にも言うなよ?』
◆
「……あいつ、ホント嘘つくの下手クソだな」
狼谷は、最初から気づいていた。
本当は素子が雅人と付き合ってはいないということに。
そして、自分を守るために
素子がエリカたちのグループから余計に目をつけられているということに。
なぜなら狼谷は、
愛美たちが素子に『狼谷をハメよう』と言ったとき、そばで聞いていたから——。
「ありがとな、モト公」
猫かぶり教師は優しい笑みを浮かべそうつぶやくと、ポケットから取り出したタバコを咥え、火をつけた。