『誰にも言うなよ?』


雅人はわたしの用心棒みたいなもんだ。


『彼氏と思って』なんて言われたけど、あれはわたしが気を使わないためにかけてくれた言葉なわけで。


勘違いしちゃいけない。


隣でおにぎりを頬張るこの人は、ただの、友達。


(……友達?)


「雅人」

「ん?」

「わたしのこと、どう思ってる?」


友達って……思ってもらえてるのかな。

だとしたらこの学校で初めての友達になる……。


「素子は?」

「え!? わたし……?」


逆に聞き返されてしまった。


「と……友達、かな」


すると、雅人が眉をひそめる。


おこがましかっただろうか。


「や……えっと、」

「嬉しくない」

「……え?」

「俺、素子のこと友達なんて思ってねぇから」


――!!


そっか。


わたし達、友達にはなれないんだ。


あくまで利害関係の一致している男と女で。


偽カップルで。


それは、友達では、ないんだ……。


「手作りっていいな」

「……そう?」

「ごちそうさん」


全部、食べてもらえた。


嬉しい。


こうして雅人と過ごす時間は嫌いじゃない。


むしろ好きだ。


だけど勘違いしちゃいけない。


雅人はわたしのあくまで仮の恋人だってことを。


それ以上でもそれ以下でもない――。


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