『誰にも言うなよ?』
——放課後。
自転車を押して学校から出た数メートル先で歩いていると、背後から誰かに声をかけられた。
「もーとーこーちゃん」
――?
顔をあげると、マスクをした男2人組がわたしの前に立ちはだかっている。
誰、コイツら。
金髪と茶髪。
私服を着ているから学生かはわからないが、20前後くらいに見える。
「木乃素子だよね?」
「違いますけど」
「は?」
「失礼します」
こんな見るからに厄介そうなのに関わっていられるか。
どうして名前を知られているんだろう。
気持ち悪い……。
今日は雅人と学校の近くの本屋で待ち合わせしている。
わたしが委員会で遅くなるといったら、そこで待つといってくれたから。
男たちを避けて前に進もうとした、そのとき。
「間違いない。写真の子だ」
「写真より可愛いな」
は?
こいつら、なに言ってるの……?
「俺たちと、遊ぼ」
「やっ……!」
――ガシャン
自転車が、倒れる。
「っ……!?」
いとも簡単に連れ込まれてしまった。
そばに停まっていた、黒いワゴンに。
「ああ、暴れないで。傷モノになりたくなかったら」
金髪がポケットから取り出したのは、ナイフ。
……嘘でしょ?
「出せ」
茶髪の合図で運転席の男がワゴンを発車させる。
わたし、どうなっちゃうの……?