『誰にも言うなよ?』
殺風景な部屋にあるのは、今わたしが寝かされているベッドだけ。
……嫌な予感しかしない。
“絶体絶命”の四文字が脳裏に浮かぶ。
鞄は、取り上げられた。
身ひとつで取り残されたわたしに、なにができるっていうの。
「……あ」
待てよ。
あるじゃん。ポケットに。
いつかあの男が〝お守り〟と言って渡してきた、アレが。
今朝みたときは、電源が入っていた。
まだあのままだとしたら、通報できる。
犯人がマヌケでよかった。
身体チェックし忘れたんだ、きっと。
ここの場所がどこかわからないから伝えられないが、警察なら逆探知して来てくれたりしないだろうか。