『誰にも言うなよ?』
「キミらしく喋ってよ」
どうしよう。
どうしようっ……。
「はい。どーぞ」
こんなに緊張する自己紹介は初めてだ。
「……木乃、素子」
「モトコ?」
「うん」
「初めて聞く名前だなあ。年齢は?」
「……15、だけど」
わたしのこと、なにも知らないで連れてきたの?
「ファーストキスは、いつだった?」
「……っ!?」
「あはは。照れてる」
なに言わせようとしてんの。
「言えないくらいはやかったの?」
逆だよ、逆。
したことないですが、なにか。
「まあ、いっか。次にいこう」
思ってたのと、違う……。
こんなの記録してどうすんの?
「生きてきて一番痛かった経験って、なに?」
そんなこと聞かれても覚えてないよ。
でも、なにか言わなきゃ。
うーん……。
「柱に小指をぶつけたこと、かなぁ?」
「ふぅん。そんなことなんだ」
「……え? 小指だよ。痛くない!?」
「まあ、指先って神経たくさん通ってるから痛いらしいねぇ。その代わり、命には別状のない怪我で済んだりするんだよね」