『誰にも言うなよ?』
(雅人……)
こんなときまで、彼氏設定を貫いてくれてる。
危ない目に合うかもしれないのに
助けに来てくれた……。
先生が、ここまでバイク走らせてくれたんだ。
どうやってここがわかったんだろう。
「オジサン、誰?」
銀髪が先生に問いかける。
「誰だっていいだろ。そいつを返してもらうよ」
狼谷はヘルメットをはずさない。
「変なの。モトコは青山くんのものなんだよね。なのにオジサンもホンキになってるんだ?」
「はは。小僧相手に本気なんて出すかよ」
「そうじゃなくて。オジサンも……」
「しまえっつってんだろうが小僧」
――ほんの一瞬の、出来事だった。
躊躇うことなく近づいてくると、銀髪に蹴りを入れ掌からナイフを弾き飛ばした先生。
「狼谷っ……オマエ、素子に当たるとこだったぞ」
足元に落ちたナイフを拾い上げる雅人。
「当たらなかったろ?」
「ったく……」
「行くぞ木乃」
「……わっ」
スーツの上着をかぶせられ、抱きかかえられる。
「なにすんのっ……!!」
「暴れてパンツ見えても知らないからな」
「……はぁ!? エロキョーシ!!」
「それが助けにきたヤツへの台詞か?」
「っ、」
「じゃーな銀髪。俺を敵に回したくなけりゃコイツには手を出さないことだ」