『誰にも言うなよ?』
「もうすぐ球技大会もあるし、おばあちゃんには、その練習でジャージ登校って言い訳したからとりあえずは誤魔化せたんだよね」
「心配かけなくて済みそうか」
「うん」
あくまで雅人にとってわたしは
女の子から言い寄られたときの、逃げ道で。
わたしは、先生との噂を消すために
雅人の仮の彼女になった。
その結果、
目に見える嫌がらせが減ったものの、相変わらずエリカのグループには標的にされ続けている。
だから雅人は、わたしを守ってくれている。
最初は利害の一致していたこの関係も、今となっては雅人の負担が大きすぎる……。
「……ごめんね」
「なにが?」
「雅人を巻き込んじゃってるなと、思って」
「…………」
わたしは、雅人に甘えすぎている。
このままの関係でいて本当にいいのだろうか。
「彼女役、他の子に頼めないかな」
「……は?」
雅人は、わたしといない方が自由になれる。
「狼谷となんかあった?」
――え?
「狼谷に、俺と恋人だと思われるのが嫌?」