『誰にも言うなよ?』
戻った途端、
「転校生とどういう関係なの?」
「仲、いいの?」
女子たちから詰め寄られる。
「すごいね、木乃さん」
――は?
「どうやったら男そんなに骨抜きにできるの?」
「やっぱり男は物静かな子が好きなのかな」
骨抜きとか意味がわからないし
わたしは物静かでもなんでもない。
「……でも、最近委員長ちょっと口悪いよね」
やっぱり気づかれている。
本当のわたしに。
こんなはずじゃなかったのに。
地味キャラを3年間通すはずだったのに。
わたしの平穏な高校生活は、永久に訪れないかもしれない……。
「ギャップに男はやられるのかな?」
「あぁー、そっか。ギャップかぁ」
勝手に納得し始めたクラスメイト。もう、好きに言っていてくれ。わたしは勉強がしたいんだ。
「さーて、予習予習……」
女子から逃げようとした、そのとき。
「素子」
雅人が、教室にやってきた。
あれ。一人……?
レオは、屋上に置いてきたのかな。
「来い」
「え?」
「いいから」
手を引かれ、ひとけのない校舎まで早足で向かう雅人に慌ててついていく。
やがて雅人が立ち止まると、わたしもつられて立ち止まった。
「キスした?」
「え……」
「レオと。キスしたのか?」