『誰にも言うなよ?』
「モトコ」
「ん?」
「モトコがボクのモノになるなら、ひと肌脱いであげなくもないよ」
「……え?」
「モトコがボクのお嫁さんになるなら他人じゃなくなるからパパも動くかもよ?」
「そんなバカな」
金持ちが貧乏人を嫁にもらうこと自体おかしいでしょ。
「さっきから、どうでもいい他人の為に一生懸命なモトコが可愛くて仕方ないんだよねぇ」
「はぁ?」
「婚約しちゃお?」
そんなの、めちゃくちゃだ。
「あのねぇ。そんな取り引きみたいな婚約するわけないでしょ」
「ボクといれば怖いものなんてなくなるよ?」
たしかにアンタ以上にヤバそうなものってそういないかもしれないけど。
「……アイツならなんとかしてくれるかも」
「アイツって?」
「別に」
なんでこんなときに、あの男の顔を思い浮かべちゃうかな。
「……もしかして、カミヤ?」