『誰にも言うなよ?』
素子の出ていったリビングが一旦静まり返ったあと、口を開いたのは雅人だった。
「なんであんなこと言った?」
「なにがー?」
「とぼけるなよ。思ってもないこと言いやがって」
すると、レオの笑顔が崩れた。
「だってさぁ。ハンデ、ありすぎなんだよ」
「あ?」
「カミヤに勝つにはズルく戦わなきゃ。ほんとは青山くんだってわかってるんでしょ」
「……だからって素子を傷つけてまで幸せになりたいか? 今にも泣きそうな顔して出てったろ」
「いいんだよ、それで」
「なんだと?」
雅人の肩に、ポンと手を置くと
耳元でそっと囁くレオ。
「ボクはあの子を傷つけたとしても、この手で幸せにしてあげられるからね」
「……!」
「賢く生きようよ、青山くん。傷心中の女の子ほど落としやすいものはないよ。今ならモトコはボクたちのこと好きになってくれるんじゃない? これはチャンスだ」
「ふざけんなっ……」