『誰にも言うなよ?』
「ボクはそんな青山くんが好きだよ。恋愛するのに優等生になる必要なんてないんだ。幸せを願って身を引くくらいなら自分が幸せにしてあげればいいもんね」
「それが正論かどうか俺にはわかんねーわ」
複雑そうな表情を浮かべる雅人。
「もし、ボクたちが少し邪魔したくらいで壊れてしまうな関係なら。最初から結ばれない運命だったんだよ」
「……なあ」
「なんだい?」
「狼谷は“ひと仕事”終えたあと、どうすると思う?」
ソファにかけ、足を組むと
顎に手をあてて考えたあと答えをだすレオ。
「“消える”」
「…………」
「だから、モトコと一線おいてるんじゃない? いなくなったあとモトコが悲しまないように。自分に依存させすぎないように。それで青山くんをすすめてみたりボクに任せてみたりしてそうだよねぇ」
「だけどアイツ心の底じゃ素子のこと、独占したそうにみえる。……俺の前で、素子に守るとかほざきやがった。あんなの期待させてるようなもんだ」
雅人は、狼谷の素子に対する中途半端な態度が気に食わなかった。
「天下の黒豹も、人間だったんだねぇ」
「……は?」
「あの子が大切すぎて傍に置けない、なんてさ」