『誰にも言うなよ?』
「……ん?」
わたしは、写真中央の男に注目した。
――訂正。
〝注目させられた〟といった方が、正しい。
自然とその人に視線が奪われた。
そんなにアップで写っているわけじゃないし
画質がいいともいえない。
それでも、
その男が美形だというのは一目瞭然だった。
黒髪、オールバック、黒マスク。
小顔で長身。
あの狼谷先生が……
こんな写真を大切にしているのは、なぜ?
ドクドクと心臓がいつもより速めに鼓動しているのがわかる。
目が、逸らせない。
中央の男の、まるで刃のように鋭い視線から。
同時に抱く、謎の、違和感。
なにか……
なにか大きなことを見落としているような、そんな気分に陥る。
ただ、それが、なにかわからない。
「——木乃さん?」