『誰にも言うなよ?』
「強がっちゃって」
「強がってるもんか」
「カミヤが恋しくて枕を涙で濡らしてるんでしょ?」
「……はぁ?」
「会いたい?」
狼谷は、あの日
学校から姿を消した。
元々影が薄かったし担任を受け持っているわけでも誰かに特別好かれていたわけでもなかったから、狼谷が消えたことをとやかくいう生徒はいなかった。
むしろ、狼谷の代わりにやってきた女の先生が美人で生徒が珍しく授業に積極的に参加している。
狼谷は『仕事』を終えたから、いなくなった。
頃合いをみて『雇い主』が切ったのだろう。
「……別に。会いたくない」
「ほんとに?」
「ほんと」