『誰にも言うなよ?』
「――では、芦屋さん答えて下さい」
頭を抱えていると、エリカが名指しされた。
(……やっぱり。読みは当たったのか)
エリカは得意げに課題の答えを読み上げた。
言わずもがな、わたしの貸したノートからうつしたものだ。
(……!?)
エリカの解答を聞いてすぐ、
わたしは“あること”に気づいた。
だが、気づいたところでどうにもできない。
もう答えてしまったあとだから……。
エリカの口にした解答は
どういうわけか、
「芦屋さん、不正解よ」
……間違っていた。
教室の空気が、一瞬で凍り付いた。
あのエリカが恥をかいたからだ。
そんなことを気にもせず牧野先生は続けた。
とどめの一撃を、与えるかのように。
「復習問題を間違えるなんて……。前の時間、ちゃんと聞いていましたか?」
—―マズい。
この空気は……非常に、マズい……。