『誰にも言うなよ?』
「……先生の影響力、凄すぎ」
「もう先生じゃないけどな?」
数ヶ月ぶりに会ったブラックな方の先生は、なにひとつ変わった様子がなかった。
余裕綽々で、なにを考えているかわからない。
「ねえ」
「ん?」
「……狼谷は、この学校を守りに来たの?」
誰かに頼まれてきたの?
また、命令か下されたの?
「呼び捨てか」
「自分が……先生じゃないって言ったんでしょ」
「まぁな」
大きなエンジン音が、やがて小さくなり消えていく。
学校から暴走族のバイクが離れていったんだ。
怪我人がどれだけ出たかわからない。
けれど、これ以上この学校が荒らされることも傷つけられることもなくなったわけで……。
ひとまず安心してよさそうだ。
きっとこれじゃ午後の授業は中止だろうけど。
「素子……!」
「雅人っ!?」
「無事で良かった」
雅人が駆け寄ってくる。
「ねぇ……腕、」
左腕を抑えている、雅人。
「なに。このくらい平気だ」
「殴られたの?」
「ちょっとな」
「保健室行こ!」
「いや、待て」と狼谷が雅人の腕に触れる。
「……っ、」
痛みで顔を歪める雅人。
「すぐに病院に行け、青山」
「はは。言われなくても」
(まさか、雅人の腕……)
「折れてるんだろ?」