『誰にも言うなよ?』
「そん……な、」
「たいしたことないっつーの」
無理に笑う雅人。
もし、あのとき、わたしが逃げていなければ
わたしも大怪我をしていたかもしれない。
それでも。
雅人ひとりがそんな目に合う必要もなかった。
「ごめんねっ……」
「なんで素子が謝るんだよ」
「なにも、できなくて」
「なに言ってんだ。俺だけで済んでよかった。素子まで襲われてなくて良かった」
「雅人、」
「つーか、レオ。なに降りてきてんだ? 上に連れて逃げろドアホ」
冷静にツッコむ雅人に、
「ほらね。やっぱり青山くん怒ったでしょ、モトコ」と舌を出して笑うレオ。
「病院、わたしも一緒に行く!」
「俺のことはいいから。そいつと話してこい」
雅人が狼谷を睨む。
「なんだモト公、俺に話があったのか?」
「えっ、いや……あの、一発殴ってやろうかと思っただけ」
そう答えたあと、レオと目が合う。
って、これじゃダメじゃん。
……素直に、なりたいのに。
『ガ ン バ ッ テ』
と、レオがつぶやいた気がした。
厳密にいうと口パクだったのて本当にそう言ったのかは定かではない。
レオは、雅人を連れて病院へと向かった。